七色遠景

きみと地球儀を回して止めた

ここに行きたいね

ちょっと暑すぎるよ

きみと天球儀を回して止めた

ここに行きたいね

きみはもう返事をしない



ひっそりおすすめ

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堕ちた祈り

嗚呼 またもや情動の処理ですか 手際良く


欲する物を すべて手に入れて


故郷の石畳だけは 踝の痛み 青葉の隙間 炎天下




人混みのアスファルトの足元に 落とした五円玉は


あの昔 鳴らした 小さな神社の賽銭箱に 響き落ち


揺れる赤と金色に 小さな手を合わせ 目を瞑った


あの時の 叶わぬ願いを思い出しましたか



それとも願わずとも手に入れたのは


絶えずポケットの中の掌で握っている


この街に垂れ流された 濁った電波の滴ですか



製氷皿

好きで堪らないアーティストの


自信を持っている者特有の饒舌さですら


今は自分だけ取り残されている気がするだけ


君はこの冷凍庫の製氷皿の小さな升目のような白い箱に


いったい何を探していたの


ここは宝石箱じゃない


光り輝くダイヤモンドに見えていた私の魂なんて


すぐにあなたの日に焼けた手の中で解けてしまうただの氷


水浸しになったら


迷惑そうにいつもの薄汚れたジーンズで拭うだけ


その手が乾いたらまた


新しい柔らかな肌を探せばいい


この小さな製氷皿は勿論楽園でもなければ


オアシスでも避難所でもない


ただの待合室


黄色い冷蔵庫を開ければ


冷たい風が心地いいだろう


君と最後に観た映画みたいに冷凍保存してるんだ


空がバニラ色になる日まで


あと150年後まで


ずっとこの待合室で



blank disk 

MDの中は空っぽ

自分の好きな曲だけ集めて
集めて繋いだでもたった今blank disk 

聴きたい曲なんてこれっぽっちもないんだ


音楽は何故にこう風景のように
感傷を呼び起こすむやみに
撫でられたくないところを撫でる


all erase? all erase?
全部消してしまえよ
MD持ってたんだずっと真四角の
レゴブロックみたいな
CD焼ける前だから

流行のあれとかが出来る前だから
草原とか大好きなんだ 夜空も好きなんだ

月は優しいんだ
今は聴く場所もないんだ


ブルーハーツが何か歌ってたんだ
とても大事なことをいってた気がしたけれど
もう思い出せない
汚い言葉に上書きされてしまったんだ

MDみたいに簡単に
口を開けばプラットホームの沁みのような言葉しかもう



大樹の肌触りが好きなんだ 新緑が揺らす風が好きなんだ

柔らかな花の細すぎる首が好きなんだ
君の柔らかな頬が好きなんだ
今は聴く場所もないんだ


笑顔の続き

君の小さな顔包むラビットファー


コートに埋もれて首を傾げてる


ぼくたちが探していたのは


携帯のハートだらけの受信メールを返信することと


あの深夜のバラエティー番組の話をすることと


雑誌に載った店を


プリントアウトしたチケット握って探すことと


他には 他には


君の笑顔の続きが見たいのに


何も出来ない



君の小さな耳にぶら下がるキュービックジルコニア


首を傾げる度に揺れてる


春一番は今年は早い


誰もいない屋上に行こう


ぼくたちは風に飛ばされそう


コート脱ぎ捨てて


ピアス外して


小さな青空一枚


夜は星空一枚


ふたり寄り添って羽織って


君の笑顔の続きが見たいから


何も出来ないけれど


この 差し伸べた手を 握ってくれれば




トーキョー


「何故ここに住んでいるの」

二度聞かれた

いつものように

異邦人扱いされている訳じゃなくて

故郷から来た人に

携帯電話で

「皇居が見える」

「六本木が見える」

「近づくほどにわくわくする」

彼は流行りの歌のようにそう実況中継した

「何故この街に住めるのなら住みたいと思わないの」

何故だろう

一度なくなった席を取り戻すのは

あらかじめないところに席を作るより大変だからだろう


トーキョーは喪失

ここは無いだけ

その違いかもしれない

そして年は新たに

トーキョーにほんの束の間

戻った時

わたしは未だ失っていないものを見つけられるだろうか


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