製氷皿 | 七色遠景

製氷皿

好きで堪らないアーティストの


自信を持っている者特有の饒舌さですら


今は自分だけ取り残されている気がするだけ


君はこの冷凍庫の製氷皿の小さな升目のような白い箱に


いったい何を探していたの


ここは宝石箱じゃない


光り輝くダイヤモンドに見えていた私の魂なんて


すぐにあなたの日に焼けた手の中で解けてしまうただの氷


水浸しになったら


迷惑そうにいつもの薄汚れたジーンズで拭うだけ


その手が乾いたらまた


新しい柔らかな肌を探せばいい


この小さな製氷皿は勿論楽園でもなければ


オアシスでも避難所でもない


ただの待合室


黄色い冷蔵庫を開ければ


冷たい風が心地いいだろう


君と最後に観た映画みたいに冷凍保存してるんだ


空がバニラ色になる日まで


あと150年後まで


ずっとこの待合室で